2015年8月30日日曜日

古艶(パティナ)について

こんにちは、みなさまいかがお過ごしでしょうか。
8月ももう終わり、2015年も3分の2が過ぎようとしております。気温もぐっと下がり私は風邪をひいてしまいました、みなさまくれぐれもお気を付け下さい。

さて、本日はアンティーク家具を語る上でよく耳にするワード、古艶(patina パティナ)についてお話します。
patinaとは「経年変化の味わいや楽しみ」という意味のラテン語です。手元の資料では【古い青銅の表面に塗る緑色がかった上塗り。または、外気にさらされたり、ワックス掛けや艶出しを繰り返されてできた、あらゆる素材の古つやのこと。木工細工の光沢】とあります。



金色を帯びたマホガニー

№4357 ビクトリアンサイドボード




















アンティーク家具の表面はラック貝殻虫を原料とするシェラックニスを幾重にも重ねて薄い塗膜を形成し、ビーズワックス(蜜蝋ワックス)で仕上げられます。そして人の手に渡り、数十年〜数百年もの歳月の中、日々の接触の中でおこる擦れや磨きの繰り返しで生まれる自然な艶。そして、この長い歳月の間に、木材自体も酸化や紫外線の影響で色合いや表情を変化させます。一般的には薄い色味の木材は濃く、濃い色味の木材は薄く経年変化します。
これらの物理的・科学的変化の双方が、長い歴史(時間)の中で現代塗装では表現できない唯一の味わい深い表情となって表れるのです。

 

№4350 カーブドチェア

飴色に変化したウォールナット





















patinaはアンティーク家具の価値のひとつとして尊重され、すばらしいパティナを纏った家具はそれだけで家具の価値を上げます。再塗装はもちろん可能ですが、その行為は家具の歴史を否定する事になりかねず、慎重に考えなければなりません。そして、これを保護する為に修復という仕事が存在し、また次世代へと受け継がれるのです。


№4280 リフェクトリーテーブル

小傷もまたひとつの表情と言えるでしょう

  



















 インクや水滴の染み、タバコなどの焦げ跡、磨耗によって丸くなった角、引っかき傷や物を落とした跡、重ねられたワックス、過去の修復跡、、全身に残ったその家具の歴史やストーリーをたどる空想は、アンティークを愉しむ醍醐味のひとつです。


バーウォールナットのすばらしい表情

№3605 ニーホールデスク





















westwoodではこのパティナを損なわないよう基本再塗装せず、タッチアップと磨き上げをおこない提供させていただいております。※くすんでしまった家具に美しいパティナを甦らせる方法は企業秘密です。
しかしながら実用していただく家具ですので、小さなお子様がいるご家庭になどにはテーブルのトップだけ水に強いラッカーで仕上げるなど、使用状況に合わせたさまざまな仕上げにも対応しております。お気軽にご相談ください。


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2015年8月29日土曜日

アールヌーヴォーシャンデリア ノヴェルディ

みなさまこんにちは。
9月を目前にして、ここ数日朝晩が冷え込んできました。
蝉の鳴き声が減っていく一方、どこからともなく鈴虫の鳴き声が聞こえてきます。虫たちは秋へと身支度を始めているようです。

今回はアールヌーヴォ―期のガラス作家ノヴェルディの天吊灯のご紹介します。
【ノヴェルディ】
ミュラー兄弟の工房でガラス製法を学んだのち、1920年頃、故郷のDijon(ディジョン)で独自の工房を設立。 設立当初は、師ミュラー兄弟の流れをくみ、可憐なアールヌーヴォー様式を基調としていた。 アールデコが勃興すると、時代の流れに従いより端正な作品を手掛けた。 同工房は、メタルワーカーとの連携が他工房よりも密であったので装飾のバランスに優れており、作製年代を問わず全体的に品質の良い作品が多い。


№9666 天吊灯




















ガラスの表情がとても魅力的なランプで、ガラス下部3方には鮮やかな朱色が際立ちます。褐色を使用したランプは多くありますが、この様な朱色はめずらしく、電球の光にも負けない朱が映えるシャンデリアとなっています。
金具がガラスの表情を邪魔しないことで、ガラスの鮮やかさに惹きつけられてしまう、そんなアイテムです。

№0359 松笠文天吊灯
http://www.westwood-jp.com/lights/0359.html






















アールデコの天吊灯は松笠文様で装飾されており、日本ではガラス細工の「切子」などに使われる文様です。松ぼっくりと松の葉の表現は日本ので表現される松と類似し、ジャポニズムの影響が色濃く表れています。
ここで驚くのは、金具にはバラが施されていることで、メタルワーカーとの連携の良さが伺える装飾となっております。
日本では組み合わせとして発想しにくいものを見事上手く表現してます。

№0272 松笠文天吊灯4灯式
http://www.westwood-jp.com/lights/0272.html





















もう一つのアールデコの作品は、4灯式の天吊灯でこちらも松笠文様が施され、より繊細に松の表現をしています。四方に展開したガラスは、空間の天吊の中でも重厚感があり、天吊灯であることを忘れてしまいそうな程の存在感です。

奇抜にも思える組み合わせが作品の存在感を際立たせ、ガラス・金具の巧みなバランスがノヴェルディ独特の表現を実現しています。新たな芸術表現アールヌーヴォーの時代で表現していくには物事にとらわれない感性が必要だったのかもしれません。
当店にお越しになった際は、時代を生きた芸術家達の作品をぜひご覧になってください。





2015年8月24日月曜日

英国アンティーク ビューローブックケース

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ビューローブックケース


みなさまこんにちは。
8月もあと一週間を残すばかりとなりました。
夏祭りも終わりはじめ、祭り後のもの寂しさを感じます。

今回はビューローブックケースをご紹介します。
ビューロー(書机)の上にブックケース(本棚)が一体となった家具です。下部のビューローは通常のモノよりも大きく、上部にブックケースを要しながらも非常に安定しています。
傾斜面の天板には、シェルとアカンサスで装飾が施され、シンプルながらも存在感を持たせています。 





















ブックケース部は、ガラス面を邪魔しないグレイジングバー(桟)と、両端の上へ登るような装飾がブックケースに上昇感を与え、見上げた際の圧迫感を緩和しています。
ケース内の棚板は調節が可能です。





















ビューロー内部は、中央部を5段4列のポケットがありレターフォルダーとして用いられていました。左右には、ビジネスカードと写真を入れるフォトフレームがあります。
天板はレザー張りで、筆記をするのに適しています。














  

異なった機能を持つこのアイテムは、下部のビューローに重厚感をもたせ、上部のブックケースの圧迫感を取り除くことで、全体をうまく調和させ一つの家具へと昇華させています。
家具としての機能と室内の景観とを両立させるバランスのとれたアイテムとなっています。


書面や手紙でのやり取りが当たり前だった当時を垣間見ることができます。
電話やメールではなく、大切な人の手紙でこのフォルダーをいっぱいに出来たのなら、それはとても幸福なことですね。
みなさまも大切な人に手紙を書いてみてはいかがでしょうか。

2015年8月18日火曜日

英国アンティーク ファイルキャビネット

No.3097 ファイルキャビネット
http://www.westwood-jp.com/furniture/3097.html





















みなさまこんにちは。
昨日は、久しぶりに全国的な雨となりました。夏の暑さだけでなく急なゲリラ豪雨にも十分に用心してお過ごしください。

今回はファイルキャビネットの紹介です。
実務に向いた重厚感のあるキャビネットで、当時オフィス家具として重宝されていました。アンティーク家具は基本的に一点モノですが、チェアやテーブルなど生活に欠かせないモノはデザインや様式で類似が見られます。しかし、ファイルキャビネットのような実務に適したモノは特に稀少と言えるアイテムの一つです。





















上部には、A4サイズの書類を収納できる引き出しを二列九段備え、それらを鍵付きのロールトップ(蛇腹式)で保管できます。
ロールトップは支障なく可動し、現代のモノと比較してもなんら遜色ない精度を有しています。ロールトップの蛇腹部を大小交互に組み合わせることで、可動を円滑に機能させる計算された設計になっています。



下部には、広めの収納スペースが確保されています。
材質はオークでできており、もともとの色合いとライトオークの塗装を生かし、可動の多い引き出しやロールトップの擦れによる色落ち目立たなくするとともに、全体が経年により味のある風合いになっています。



























このようなファイリングを目的とした家具は産業革命以前には存在せず、産業の発展とともに紙の需要が高まったことが要因としてあげられます。
以前は紙は麻などの植物から製紙されていましたが、木材から製紙可能になり一年を通して安定供給され多くの人の手に渡るようになりました。
本などの冊子ではなく用紙で手に入るようになり、書類の整理や機密保持が必要になったのです。






19世紀頃のイギリスの抄紙機(しょうしき)
Clapperton "The Paper-making Machine"より



紙の消費量が産業文化発展のバロメーターと言われ、それにあわせて新たな家具が誕生していきました。アンティークだからと飾るだけではなく、そのモノの本来の用途を理解し、生活の一部として活用できたなら、アンティークがより身近なものになっていくのではないでしょうか。

2015年8月16日日曜日

英国アンティーク ティルトトップテーブル

No.9678 インレイティルトトップテーブル















みなさまこんにちは。
夏期休暇に入られた方も多いかと思いますがいかがお過ごしでしょうか。
この機会に日頃の疲れを癒し、明日への英気を養っていただきたいと思います。

今回はインレイ(象眼細工)が施された気品あるティルトトップテーブルの紹介をいたします。 
ティルトトップテーブルとは、天板が蝶番によって垂直に可動する一脚テーブルのことを指します。
可動する事で収納も容易になり、非常に実用的なテーブルとなっています。





















ウォールナットの天板にインレイが施された、繊細さと気品をただよわせています。
インレイでこのサイズは、今まで当店で取り扱ったティルトトップから考えても稀少なアイテムです。
ウォールナットの木目に黒のインレイが中央.四方に施され、ウォールナット独特の不規則な自然模様を引き締め、全体に統一感をもたせています。
また、アイボリー色で細工されたアンカサスモチーフは、古代ローマ・ギリシャから用いられる伝統あるモチーフで、英国の聖堂建築の装飾などに多く見られます。
これらのインレイは伝統を重んじる英国の精神を感じさせます。 

 














 脚部の装飾は、バードゲージプラットフォームと呼ばれ、まるで空間の総合芸術と称される聖堂建築を切り取ったかのように荘厳な造りとなっています。天板を傾けた際に顔を出し、天板下の空間には英国職人のこだわりと技術の高さが伺えます。




英国アンティークは中世の建築技術を色濃く受け継いでいます。
時代や産業が変化しても、英国の根底にある自然崇拝は聖堂建築からアンティーク家具に形を変えて人々に寄り添っているのかもしれません。
アンティークをご覧になる際、いつもと視点を変えてみることで新たな発見があるかもしれません。
当店ご来店の際は、そんな発見をしていただけたら幸いです。

皆様、心よりご来店お待ちしております。

2015年8月9日日曜日

スモール・ドローリーフ

みなさまこんにちは。


本日はイギリスアンティーク家具といえば、という家具をご紹介いたします。

新入荷商品である、こちらのテーブルです。


No.4362 スモールドローリーフテーブル


ドローリーフテーブルです。
ドローリーフテーブルはその名の通り、"引く葉"のテーブルです。天板の下に伸張板(葉)が2枚収納されており必要に応じて引き出して使用いたします。脚は2本脚と4本脚のものがございます。
サイズはだいたい同じものが多く、90×90×76あたりのサイズが一般的です。


さて、今回ご紹介するドローリーフは"スモール"ドローリーフです。
天板のサイズが76×76とひとまわり小さいのです。また高さも76なのでリーフをしまった状態では一辺76㎝の立方体となります。
このサイズのドローリーフは稀少で大変めずらしいです。

脚は4本脚のツイストレッグ。

4人で使用もできますが、サイズの大きさから2人での使用をお勧めいたします。

色味はライトオーク。

天板の虎斑が厳つく見えないのはその可愛らしい佇まいの効果でしょう。
しかし小さいものはなぜ可愛く見えるのでしょうか?


これからアンティーク家具を揃えようとしている方にぜひおすすめのテーブルです。
このテーブル一つでイギリスのカジュアルなダイニングの雰囲気を作ることができます。


店頭にて展示してございます。
ぜひ一度ご覧になってください。ご来店お待ちしております!