2018年7月30日月曜日

【概説】英国王朝史

エリザベス様式、クイーンアン様式、ジョージアン様式、ヴィクトリアン様式…。
アンティークの家具を見ていると、その時代の君主の名前を冠した様式名にぶつかると思います。今回は、一つ一つの様式の特徴を把握する前提として、英国史上どのような王朝が成立していったのか見てゆきたいと思います。



歴代に英国を統治してきた君主の名前と順番を覚えるのは骨が折れます。
なのでまずは大きなカテゴリーとして王朝の名前とその順を把握すると良いと思います。

ノルマン朝(Norman)
プランタジネット朝(Plantagenet)
ランカスター朝(Lancaster)
ヨーク朝(York)
チューダー朝(Tudor)
スチュアート朝(Stuart)
ハノーヴァー朝(Hanover)
ウィンザー朝(Windsor)

一応記憶するための語呂合わせもあります。
英語にはなってしまいますが、

No Plan Like Yours To Study History Wisely

イギリスの学校で子供たちが王朝を覚えるために使っている語呂合わせで、単語1つ1つが歴代王朝の頭文字になっています。

No → Norman
Plan → Plantagenet
Like → Lancaster
Yours → York
To → Tudor
Study → Stuart
History → Hanover
Wisely → Windsor


<チューダー朝の系譜>
ヘンリー7世
ヘンリー8世
エドワード6世
メアリー1世
エリザベス1世

王もしくは女王の名がつく様式の中で一番古いものは、エリザベス様式です。エリザベス1世(1558-1603)はチューダー王朝最後の女王。スペインの無敵艦隊を破ったという話は歴史の授業で1度は習ったのではないでしょうか。生涯結婚することなくその身をイギリスに捧げた女王であるため、ヴィクトリア女王と並んで非常に人気があります。「私はイギリスと結婚した。」という彼女が残した言葉も、もしかしたら聞いたことがあるかもしれません。

エリザベス1世


<スチュアート朝系譜>
ジェームズ1世
チャールズ1世
チャールズ2世
ジェームズ2世
メアリー2世・ウィリアム3世(共同統治)
アン女王


クイーンアン様式のアン女王はスチュアート朝の最後の女王。
彼女の時代に、イングランド王国とスコットランド王国における同君連合体制は終止符を打ち、2つの王国が合同しグレートブリテン王国となりました。

アン女王


<ハノーヴァー朝>
ジョージ1世
ジョージ2世
ジョージ3世
ジョージ4世
ウィリアム4世
ヴィクトリア女王

続くハノーヴァー王朝が家具の黄金時代と言えます。
ハノーヴァー朝初代から4代目まではジョージの名がつく国王が統治します。
ジョージ1世、ジョージ2世、ジョージ3世、ジョージ4世といった具合です。ジョージ1世から4世までの時代に流行した様式はジョージアンスタイルと呼ばれます。正確に言うと、ジョージ4世に関してはリージェンシー様式となりますが。

そしてウィリアム4世の統治時代を経て、時は大英帝国を築き上げたヴィクトリア女王の治世に入ります。

ヴィクトリア女王

ヴィクトリア女王の治世は1837~1901年までの約65年間。現在はエリザベス2世に抜かれてしまいましたが、最も長い在位期間の記録を誇る女王でした。産業革命の恩恵を最大限に受け、英国史上最盛期を迎えました。そんなヴィクトリア女王の時代に流行した様式がヴィクトリアン様式です。

正確に言えば、ハノーヴァー王朝後、1901~1910年までサックス・コバーグ・ゴータ王朝がありますが、この王朝の国王はエドワード7世ただ1人。ですが、エドワーディアン様式として名を残しています。

そして最後に現在も続くウィンザー王朝に入ります。

今回は歴代の王朝と様式に名を残す主要な英国国王と女王を、ざっくりとですが、紹介しました。特に王朝の順序を語呂合わせとともに覚えておくと、様式を順序立てて理解するときに便利ですよ。では。

by A

2018年7月27日金曜日

チッペンデール様式

ジョージアン中期で最も有名な家具デザイナーの1人トーマス・チッペンデール。
アンティーク好きなら一度は聞いたことがある名前ではないでしょうか。

彼を有名にしたのは、何と言っても自身デザインの家具のイラスト本「The Gentleman and Cabinet-Maker's Director」(紳士と家具職人のための指導書)。この本は家具職人たちにとってカタログのような存在となり、富裕層の顧客たちがこの本から好きなデザインを選んで家具の制作をオーダーするというシステムが生まれました。

よく勘違いされますが、「チッペンデールテーブル」、「チッペンデールチェア」というように、チッペンデールと名乗っているからといって、彼が制作した家具であるというわけではありません。現実に彼が制作した家具はほとんど残っていないのです。あくまで彼のデザインに基づいているというだけであって、上記のものを正確にいうならば、チッペンデール"様式"のテーブルであり、チッペンデール"様式"のチェアなのです。

彼がデザインした家具には大きく分けて以下の4つのタイプがあります。
①クイーンアン
②ゴシックリバイバル
③フレンチロココ
④シノワズリ


この中で、よく見かける代表的なデザインはクイーンアンのものです。
そして彼のデザインした家具の中で、最も有名で特徴がわかりやすいチェアを中心にこれからお話を進めてゆきます。

そもそもチッペンデール様式とはクイーンアン様式の変形であり、ガブリオールレッグ(猫脚)、膝や笠木のシェルやアカンサスの彫刻、そして花瓶形の背板といった特徴を引き継いでいます。

まずはチッペンデール様式のもととなったクイーンアン様式のチェアをお見せします。

№4298 クイーンアンチェア

この写真のチェアはまさにクイーンアン様式の特徴を兼ね備えていますね。
背もたれが花瓶のような形をしていて、優雅な曲線を描くガブリオールレッグ、そして笠木と膝の部分にはアカンサスの彫刻があります。

そして次のお写真が本題のチッペンデールチェア。

№4161 チッペンデールチェア


クイーンアン様式のチェアと比較してみていかがでしょうか。
細部まで見なくても全体の雰囲気からして大変似ているような気がしませんでしょうか。

もちろんチッペンデールチェアも独自の特徴を有しています。
まず1つ目が、ボール&クロウと呼ばれる足先です。




ボール&クロウとは、龍の爪が珠を掴んでいる様子をモチーフにした彫刻を指します。古代中国由来であり、神的パワーを持つ龍が財産や知恵の象徴である珠を掴むそのデザインは縁起の良いものとされています。

そしてもう一つはスプラット(背板)の精巧な透かし彫り。
主な彫刻モチーフは渦巻やアカンサス。緩やかなカーブが多様され仕上げられています。

№4004 チッペンデールチェア




№3875 チッペンデールチェア

細かな特徴であればさらにあります。
内側に緩やかにカーブしたサイドレール、中央部が凸形に膨らんだトップレール、台形もしくは四角形の差し込み式の幅広い座面。また、使用される木材がマホガニーであることも特徴の一つです。

チッペンデールの著作には、60種類以上のイスのオリジナルデザインが紹介されています。ぜひ自分のお気に入りのデザインのチッペンデールチェアを見つけてみてください。

by A


2018年7月24日火曜日

サビノの天吊灯セレクション ②

こんにちは。

全国的に記録的な暑さを更新しています。。。
東京もついに昨日は38℃を越えましたーーーー
気力も体力も落とさないように何とか工夫していきたいですね。

冷房の調節で寝苦しさを解消して睡眠時間はたっぷり取りましょう。
ヨガや軽いストレッチをするのもいいんですよね。
寝る2時間前に39~40℃くらいのぬるめのお風呂に入ると、ちょうど体温が下がる頃にすうーっと心地良い眠りに入れます・・・


では今回もサビノの天吊灯から選りすぐりの作品をご紹介してみましょう。

フランスのガラス工芸家、サビノことマリウス=エルンスト・サビノ(Marius₌Ernest・Sabino、1878~1961)は、無色・オパルセント・淡色のガラスを多く使用している事などから、作風が共通している部分があるルネ・ラリックと混同されがちです。

そしてサビノは「押し型成形」による、彫塑的な作品を多く残していることでも有名。
例えばこれはそういうサビノ作品の典型的なタイプではないでしょうか?


No.0424 サビノ アールデコ天吊灯



吊るされた真下から見ると、正六角形のパネルで、乳白色のすりガラスにデフォルメされた数種類の花々がギュッと寄せ合うようにデザインされています。






側面は正方形のパネルが全6枚。
それぞれに同じくデフォルメされた花々のデザインが実にお見事!






パネル同士を組み立てている、シルバーの金具の枠と支柱が
〝つや消し〟なので全体的にクラシカルな雰囲気です。。。









各々のシェード内側、縄目模様の辺りに陽刻サイン入りなのが見えますでしょうか?










店内にあるシャンデリアタイプ「天吊灯」のガラスシェードの中では地味な印象かもしれません。
ですが、コンパクトにまとまっていながら独特な存在感を出しているから不思議です。

因みにサビノの作品は没後も「型」がアメリカに売却され、レプリカが製造されているそうなんですが・・・
やはり是非ともオリジナルをウエストウッドに見にいらして下さい!
お待ちしております。

by K







2018年7月22日日曜日

アンティーク時計とともにいつまでも

皆さんの自宅には、目覚まし時計に置時計そして掛け時計と様々なタイプの時計があると思いますが、それらのほとんどはクォーツ式であると思います。

クォーツ時計は、電池を動力とし、非常に精度が高いことで知られていますが、万能であるわけではありません。だいたい10年ほどで寿命を迎えてしまうのです。加えて、安価ですので、資産価値はほとんどありません。よく言えば、買い替えの楽しさがありますが、悪く言えば、使い捨てということになります。

時計にはもう1つ種類があります。それが機械式です。機械式はゼンマイを動力とします。ゼンマイの巻き上げ方にも、手動式と自動巻きがありますが、自動巻きは着用時の腕時計のように一定の動きを動力源に伝達し続けることができなければ機能しません。それゆえに、アンティークの置時計の仕組みは手動の機械式になります。

№9726 セス・トーマス社 振り子式置時計




文字盤上の5時と7時のローマ数字の下にそれぞれ穴があります。そこに巻き鍵を差し込み回すことでゼンマイを巻きます。片方の穴が針を動かす動力、もう一方の穴がベルです。

ゼンマイから動力を受けた歯車は、何もしなければどんどん回転速度を増してゆきますが、それでは正確な時を告げる器具として全く役に立ちません。歯車の回転を一定に保つために振り子があるのです。振り子は、空気抵抗や支点における摩擦がなければ、いつまでも同じ振れ幅で振れ続ける性質を持っています。そして振り子の長さが同じであれば、重りの重さが変わっても、振れ幅が変わっても、振り子が一往復する時間は変わりません。この性質をうまく利用しているのです。


№8278 置時計


この小さな家をモチーフにした時計には、ベルがなく、裏蓋をあけると動力のためのゼンマイのみが顔を出します。アンティーク時計にはベルを止める機構が備わっていないため、深夜であろうと早朝であろうとかまわずなり続けます。その点を考えると寝室に置く場合、ベルなしのこのようなタイプの方が望ましいですね。


№8253 ユンハンス社 置時計



このユンハンス社の時計は、3つ巻き鍵を差し込むための穴があります。1つは上のものと同じで針を動かす動力、そして残りの2つは、1つがメロディーを奏でるチャイム音、もう1つが振り子時計特有のボーン、ボーンというベル音です。このアンティーク時計はこの2つの音の組み合わせで15分、30分、45分、1時間と時を告げてくれます。


いちいちゼンマイを回すことを手間と感じてしまう人もいるかもしれません。ですが、数日に1回ゼンマイを回し、共に時間を過ごしてゆくことで時計に対して愛着がわいてきます。10年で寿命を迎えてしまうクォーツ時計と違って、機械式時計は大切に使ってあげれば一生ものになります。さらにアンティーク時計ともなれば、100年もの時を経ているのです。


一度手元においてしまえば、電池を頻繁に変える必要性も一切ないわけですから、長い目で見れば機械式時計の方が費用を節約できます。



長い時の流れを人とともに過ごしてきたアンティーク時計。

これからの時間をともに過ごしてゆく次のパートナーになるのはあなたかもしれません。



by A

2018年7月17日火曜日

キャンドルの揺らめきに癒されて

日本においてろうそくは、仏壇に置いてあるもの、お墓参りに持ってゆくものというように、宗教色の強いイメージがあると思います。

古来ろうそくに灯された火は、邪気を祓う、また浄化作用があると信じられてきました。また、人が亡くなった際、ろうそくの火を絶やすことなく灯し続けるのは、故人が迷わず極楽浄土へ行くための道しるべになるようにとの想いがあってのことです。

もちろん時代を遡れば、実用的にも使われていました。19世紀末にはエジソンによって白熱電球が実用化され、蛍光灯が生まれ、今ではLED照明が主流となりつつあります。


このようにして、完全に現代で実用的な役割を失ってしまったろうそくですが、宗教的儀式とは別の理由で市場に未だに数多く出回っています。それは多忙な現代社会の中で、一定の人々が癒しを求めてろうそくを購入するからです。最近ではろうそくというよりも、キャンドルと呼ぶことの方が多いと思います。

普通のキャンドルではなく、香り付きのアロマキャンドルの方がリラックス効果が期待できるからと何かと注目を集めますが、実は香りなしのキャンドルも同様にリラックス効果が期待できます。


キャンドルスタンドにキャンドルを立て、火を灯し、その炎の揺らめきをじっと見つめているだけで良いのです。

そんなことで本当に癒されるのと疑問に思われるかもしれませんが、その秘密は炎の揺らめきのリズムにあります。キャンドルの炎は時に規則的にまた時に不規則的なリズムを刻みます。実はこの規則性と不規則性を併せ持つリズムは人の心臓の鼓動のリズムと同じなのです。人は体内の鼓動と同じリズムを感じるとリラックスすることができます。赤ちゃんがお母さんの心臓の音を聞いて心地よく眠っているのと同じですね。

また炎のオレンジ色もキャンドルがリラックス効果を持つ一つの要因です。夕日を連想させるオレンジ色は非常に暖かみがあり、安心感を与えてくれます。



キャンドルの灯を楽しむためには、いくつか道具を揃える必要があります。

キャンドル自体はホームセンターで簡単に手に入ります。
スーパーで取り扱っているところもあります。

そして肝心のキャンドルスタンド。
キャンドルスタンドには種類がたくさんありますが、特にアンティークのものは雰囲気がありおすすめです。

以下は木製のもので、オーク材で作られています。
ツイストのもの、バラスター型のもの、ゴブレット状のもの。

№4512 ペアキャンドルスタンド
№4511 ペアキャンドルスタンド


№4513 ペアキャンドルスタンド

№8267 ペアキャンドルスタンド







































またシルバー製のものももちろんございます。
キャンドルスタンドと言えば、シルバー製のものを一番最初に思い浮かべるでしょうか。
少し前に「美女と野獣」の実写化映画が公開され、その影響でこのシルバー製のキャンドルスタンドをお求めになる方もいらっしゃるんだとか。

№8279 キャンディラブラ
№4450 ペアキャンドルスタンド






















最後にガラスのもの。
ガラスはやはり透明感があって、夜だけでなく、昼間に光が当たって煌めく様子を楽しめるのも良いですよね。
№8283 ペアキャンドルスタンド


疲れて帰宅して、ご飯を食べて、お風呂に入って。
そして寝る前にキャンドルに火を灯し、その炎が揺らめく様をじっと見つめてみてください。ただし、そのまま火を消し忘れて寝落ちしないように気を付けてくださいね。

by A

2018年7月16日月曜日

サビノの天吊灯セレクション ①

こんにちは。。

3連休はいかがお過ごしでしょうか?

とにかく連日連夜30度、いや35度をも超す夏日、酷暑だ猛暑だと大騒ぎです。
因みに40度以上の暑さは〝極暑〟というそうですね。
水分補給は喉が乾く前に少しずつ飲むのが良いそうです。
食欲不振な方には冷たい甘酒がオススメですよ。
まだまだこれからもしばらくはしっかりと熱中症対策をなさって下さい!!

さて、こんな暑さの中、シャンデリアタイプ「天吊灯」の透明なガラスのシェードは
キリリとして涼しげで静かな存在感があり、心を落ち着かせてくれます。


今回はサビノの天吊灯から選りすぐりの作品をご紹介してみましょう。

店内にあるランプたちの中で、現在もっとも存在感を放っていると言っても過言ではない? まずはこの大きさに驚いていただきましょうか。
No.0419 No.0419 サビノ 松笠文天吊灯 9灯式

まさに圧巻!!のひとこと。迫力満点ですよねぇ。。。









中央の1個の半円形パネルから放射状に8枚ものパネルがシルバーの金具で
まるで花びらのようについています。

直径がなんと86cmにもなるんです。



1枚1枚のパネルには松笠(松ぼっくり)が3つずつデザインされています。




各々のパネル内側にはさりげなく陽刻のサイン入り。

写真で見ると氷で出来ている彫刻のような涼やかさ。
触れるとひんやりと冷たく感じそうですね。

余計な外出は控えなければいけない程の暑さですが、
静かに鎮座しているアンティーク家具やランプたちのいる空間にいらっしゃいませんか。

代々木上原、下北沢、笹塚にお越しの際にはどうぞ当店にもお立ち寄りください。

スタッフ一同お待ちしております。

by K





2018年7月13日金曜日

シュナイダー兄弟 ~均整の取れた美しきシェードたち~

アールヌーヴォー期には意外と兄弟で活躍しているガラス工芸家が多いですよね。
ミューラー兄弟にドーム兄弟、そしてシュナイダー兄弟。

前回ご紹介したミューラー兄弟は妹1人を含めて10人兄弟で工房を運営していましたが、ドーム兄弟とシュナイダー兄弟は文字通り兄と弟の2人兄弟です。

今回はそんなシュナイダー兄弟と彼らの作品について取り上げたいと思います。
シュナイダー兄弟は兄は名をエルンスト・シュナイダー、弟はシャルル・シュナイダーと言います。

彼らのガラス工芸品製作における役割分担ははっきりしていて、兄が工房の経営、弟のシャルルがデザインと製作のほとんどを担当していました。

彼らはドーム兄弟の工房で働いていましたが、その後1913年に独立し、自分たちの工房を持つようになりました。初期にはカメオガラスやパートドヴェール技法を用いたガラス工芸品が多かったようです。

店舗にあるシュナイダーの作品はほとんどが異色熔かし込みです。
素地のガラスに別の色を流し込みグラデーションを出す技法。


№9671 天吊灯5灯式
















№0377 天吊灯5灯式



前回のミューラー兄弟も同じ技法を用いてガラスを製作していました。
ですが同じ異色溶かし込みといっても作家ごとに特色があります。

ミューラー
シュナイダー





















例えば、上にあるバスクの写真は右がミューラー、左がシュナイダーのものです。



お次はシェードのお写真。

シュナイダー
ミューラー





















違いをお分かりいただけるでしょうか。

これは一つの傾向ですが、シュナイダーの異色熔かし込みの方が色の混ざり具合が均一であることが多いです。シュナイダーのバスクとシェードに溶かし込まれている一つ一つの斑の大きさ、そしてその距離感は非常に均整が取れており、上下の色と色との境目も比較的はっきりしています。

こうして見てみると、それぞれの兄弟の工房の性格が表れているように感じますね。後のアールデコにつながる規則性を思わせるシュナイダーの作品と、自然に任せた流れるような文様をそのまま生かすミューラー。配色や全体的なデザインだけでなく、こうした観点に着目してランプを選ぶのもまた一興です。

by A







2018年7月10日火曜日

ルネ・ラリックの天吊灯シリーズ<後編>

こんにちは。

西日本での未曾有の豪雨被害にはあまりの凄さに驚くばかりです。
まだ安否不明の方々が多くいらっしゃる中で、また新たな台風情報も。
亡くなられた方々には哀悼の意を表します。

物流が寸断され、経済にも様々な影響を及ぼしています。
現地で被害に遭われ片付けをされている方、ボランティアの方々にも
微力ながらエールを送らせて下さい。
酷暑と言われる中でもこうして普通に生活出来ている事に感謝し元気を出して
いま自分が出来ることをしっかりと頑張るしかありません。。。


さて先週に引き続き、ガラス工芸家<ルネ・ラリック>天吊灯のご紹介です。

ルネ・ラリックと言えば、やはり乳白色の美しさ際立つ『オパルセントガラス』を使用した作品が有名でしょう。

ガラス原料の硅素に動物の骨灰(リン酸塩)や亜ヒ酸、蛍石などを混ぜて溶解し、急冷してさらに再加熱すると、青白い艶を抑えた乳濁したようなガラスが出来上がります。
この技法を利用したガラスを『オパルセントガラス』といいます。
アールデコ最盛期には多くのガラス工芸家たちが用いた技法として知られています。

ラリックのガラスのシェードには動物、植物、女性像など様々なモチーフが使われているのですが、店内にある中で「植物」モチーフの天吊灯をご紹介しましょう。。



まずは1927年モデルのLIERRE(リエール)という作品。
リエールとはフランス語で「アイビー」のことです。

アイビーは「ヘデラ」や「キヅタ」とも呼ばれる観葉植物。
長いツルを伸ばすグリーンで棚や本棚に置いて「垂らすインテリア」として
人気を集めています。

No.0392 天吊灯「LIERRLE」(リエール)






































ガラスの表面を彩る「茶パチネ」という技法で葉の部分に
セピア色の色味が入っているのもアクセントになっていて素敵です。

〝パチネ〟は古色をつける、という意味があるんですね。




アイビーの葉が放射状に伸びてとても涼しげなデザイン♪
底部には葉と葉の間に陽刻のサイン入りです。







次にはOEILLETS(ウイエ)という作品。
ウイエとはフランス語で「カーネーション」のこと。
花のカーネーションのデザインがとても優美ですよねぇ。

No.0401 天吊灯「OEILLETS」(ウイエ)













































これにもさりげなく「茶パチネ」という技法が薄っすらと全体的に施されています。
明るめの色味がまるでふんわりと花と葉を縁どりしているかのよう。。。





そしてご覧の通り、点灯すると花が立体的に浮かび上がるんですよ。。
ふちの部分に陰刻のサインが見えますね?






最後は1924年のモデルCHARMES(シャルム)という作品。
シャルムとは「セイヨウシデ」の意味です。シデの木の葉がモチーフとなっています。


No.0409 天吊灯「CHARMES」(シャルム)



ご覧の通り、この「茶パチネ」は実にしっかりと濃くセピア色の色味が
葉の部分に入っており、硬めの葉の感触まで伝わってくるほど?葉脈が浮き上がって見えるのが特徴的です。


側部の透明なふちの部分に陽刻のサイン入り。



見た目よりも意外に分厚いシェードの手触り、存在感と細やかなデザインの美しさ、
職人芸と言われる技術的な加工などをここで100%お伝えするのは至難の業です。

ホームページやインスタグラムで少しでも気になるランプがありましたなら
すぐにでもお問い合わせください。
もちろんお店にも足をお運びくださいませ。

吊る紐の長さ調整や電球交換のご相談なども承っておりますので。

店内を涼しくしてみなさまのお越しをお待ちしております。

by K